情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)を取得したものの、「更新が面倒」「費用が高い」と感じて更新をやめたらどうなるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
私はこの資格を2019年10月に取得して以来、複数の更新サイクルを通じて資格を維持し続けています。今回は「もし更新しなかったら」という視点で、失効後のリアルな影響をまとめました。
更新を検討中の方、費用対効果に悩んでいる方にとって、判断材料になれば幸いです。
まず確認:登録セキスペの更新ルール
失効の話をする前に、まず現状を一つお伝えしておきます。
登録者数はじわじわと増えてはいるものの、2025年10月1日時点でも24,937名(IPA公式)にとどまっています。毎年約5,000人が試験に合格しているにもかかわらず、合格者の大多数が登録に至っていないという構造は変わっていません。
合格者の6割以上が「取っても登録しない」という選択をしている資格なのです。
登録に踏み切った人でも、「更新が面倒」「費用が高い」という理由で途中でやめる方が一定数います。この記事は、そうした判断をした場合・しそうな場合に「実際に何が起きるか」を、複数の更新サイクルを維持してきた筆者がリアルに解説するものです。
では、更新の仕組みをおさらいしておきます。
登録セキスペの有効期限は登録日または更新日から3年間です。更新するためには、この3年間のうちに以下の講習をすべて修了し、更新期限の60日前までに登録更新申請を行う必要があります。
| 講習の種類 | 頻度 | 費用(目安) |
|---|---|---|
| オンライン講習 | 年1回 × 3回 | 20,000円 × 3回=60,000円 |
| 実践講習(IPA主催) | 3年に1回 | 80,000〜160,000円 |
| 特定講習(民間・最安) | 3年に1回 | 55,000円〜 |
3年間の維持費の合計は、最安で約115,000円、一般的に140,000円前後となります。
筆者の場合:講習費用は会社負担で対応してもらっています。個人負担の方にとっては、この費用の大きさが更新を悩む最大の理由になっていることも理解できます。
更新しなかった場合に起きること
1. 更新期限の翌日付で「資格失効」となる
更新手続きを行わないと、更新期限の翌日付で自動的に資格が失効します。「失効」とは、登録セキスペとしての資格がなくなる状態です。
特別な通知が来るわけではなく、期限を過ぎた時点でそのまま失効になります。うっかり期限を忘れていた場合でも容赦なく失効するため、注意が必要です。
2. 「情報処理安全確保支援士」の名称が使えなくなる
登録セキスペは名称独占資格です。失効後は「情報処理安全確保支援士」という肩書を名乗ることができなくなります。
名刺・履歴書・職務経歴書・社内システムのプロフィールなど、名称を記載しているあらゆる場所での使用が不可となります。気づかずに名称を使い続けた場合は違反になる可能性があるため、失効後は速やかに表記を変更する必要があります。
3. 登録番号が無効になる
IPAが公開している登録者名簿(公開情報)から名前が消えます。取引先や採用担当者が登録番号で確認しようとしても、ヒットしなくなります。
4. 【見落とし注意】秘密保持義務は失効後も一生続く
これは多くの方が見落としているポイントです。
「情報処理の促進に関する法律」第二十二条には、秘密保持義務について「情報処理安全確保支援士でなくなった後においても、同様とする」と明記されています。つまり、資格が失効した後も、業務上知り得た秘密を漏らしたり盗用したりすることは、生涯にわたって禁止されています。
違反した場合の罰則は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」と、刑事罰の対象になります。
「失効したから何をしても自由」ではありません。資格取得時に負った義務の一部は、登録の有無に関わらず継続することをしっかり認識しておく必要があります。
失効後に「再登録」はできるのか?
結論から言うと、再登録は可能です。ただし条件があります。
通常の失効(更新手続き忘れ・費用未払い等)の場合
試験合格そのものは有効期限がないため、再度試験を受け直す必要はありません。
ただし、再登録にあたっては以下が必要になります。
- 登録免許税(9,000円)と登録手数料(10,700円)の再支払い → 計約20,000円(住民票取得費等含む)
- 再登録後は新たに講習受講サイクルがスタートするため、登録直後から講習費用が発生
一度やめて気が変わったとき「また登録すればいい」という考えもあり得ますが、再登録のたびに20,000円の費用が発生し、講習受講も一からやり直しになります。継続している方が長期的にはコスト効率が良いケースがほとんどです。
義務違反による「登録取消し」の場合は別ルール
講習受講義務の違反が悪質と判断され、経済産業省から**「登録の取消し」処分**を受けた場合は状況が大きく変わります。
- 取消しから2年間は再登録不可
- 2年経過後に再登録する場合でも、通常通りの手続きが必要
なお、単純な「更新手続き忘れによる失効」は取消し処分には該当しません。あくまでも、義務違反が悪質と判断された場合のペナルティです。
キャリアへの影響
「名称独占資格だし、実務に影響はないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。確かに登録セキスペは業務独占資格ではないため、失効しても同じ仕事は続けられます。
ただし、以下の場面では影響が出ます。
転職・求人応募時 セキュリティ関連職の求人では「登録セキスペ保有者歓迎」という記載が増えています。失効状態だと要件を満たさないとみなされる場合があります。
社内の案件・入札 官公庁や大手企業向けの案件では、担当者に登録セキスペが含まれることを要件とするケースがあります。失効すると担当者として名前を挙げられなくなる可能性があります。
社内評価・資格手当 会社が資格保有者に対して手当を支給している場合、失効により手当が停止されることがあります。
【2026年度開始予定】みなし受講制度で更新ハードルが下がる可能性
2025年5月、経済産業省が「みなし受講制度」の創設を発表しました。これは、一定の実務経験を持つ登録セキスペに対して、一部の講習を受講したものと「みなす」制度で、2026年度中の開始が予定されています(制度詳細は現時点で未確定)。
現時点でわかっている内容を整理すると、以下の通りです。
- 対象:企業のサイバーセキュリティ対策支援など、登録セキスペとしての実務に携わっている人
- 対象外の可能性:実務から遠ざかっている人・セキュリティと無関係の業務に移っている人
- 倫理に関する講習は引き続き受講義務あり(みなし適用は一部の講習に限定される見通し)
- 費用への影響:詳細未発表。一定の軽減が見込まれるが、ゼロにはならない
つまり、「実務をやっている人には朗報、そうでない人には恩恵が少ない可能性がある」制度です。
費用負担を理由に更新をやめることを検討している方は、まずご自身が「実務に携わっている」かどうかを基準に判断してみてください。実務者であれば、2026年度に始まる新制度の詳細が出るまで判断を保留しておく価値があります。一方、すでにセキュリティ実務から離れている方には大きな恩恵は見込みにくいため、キャリアの方向性を踏まえた判断が引き続き必要です。
私が更新を続ける理由
費用と手間を考えると、更新をやめることが頭をよぎったことは正直あります。それでも、続けることを選んでいる理由は3つです。
1つ目はキャリアの証明としての価値です。 日々の業務でセキュリティに取り組んでいることの客観的な証明として、登録セキスペという国家資格の肩書きは今後も機能し続けると考えています。
加えて、経済産業省は2030年までに登録者数を5万人に増やすという目標を公表しています(2024年時点の登録者数は約22,700人)。国がこの資格を「必要な人材の証明」として位置づけ、普及を推し進めている方向性は明確です。市場での認知度と需要は今後さらに高まると見ており、「今から継続している」という実績が、将来的により大きな意味を持つと判断しています。
2つ目は講習の学習効果です。 特にオンライン講習は最新のセキュリティ動向や法改正を毎年アップデートできる機会として活用しています。受講しながら「この内容はブログ記事にできるな」と思うこともしばしばあります。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 失効のタイミング | 更新期限の翌日付で自動失効 |
| 失効後に使えなくなるもの | 「情報処理安全確保支援士」の名称・登録番号 |
| 失効後も続く義務 | 秘密保持義務(違反は刑事罰の対象) |
| 業務への直接影響 | なし(業務独占ではないため) |
| 再登録の可否 | 可能(試験合格は有効・登録費用約20,000円が再度必要) |
| 取消し処分の場合 | 2年間は再登録不可 |
| 3年間の維持費目安 | 115,000円〜140,000円 |
| みなし受講制度 | 2026年度中の開始予定 (実務者対象・詳細未確定) |
更新するかどうかの判断は、費用・キャリアの方向性・会社のサポート状況などによって人それぞれです。ただし「失効してしまった後に後悔する」ケースも少なくないため、やめるなら計画的に、続けるなら計画的に講習を進めることが重要です。
更新サイクルや費用の詳細については、別記事「[登録セキスペの維持費はいくら?6年間の実費を公開]」でまとめています。
よくある質問
Q. 更新期限を過ぎてすぐ気づいた場合、猶予期間はありますか?
A. 残念ながら猶予期間はありません。更新期限の翌日付で失効します。更新申請は期限の60日前までに完了させる必要があるため、早めの手続きが鉄則です。
Q. 失効した後、どれくらい経ってから再登録できますか?
A. 通常の失効(手続き忘れ等)の場合はいつでも再登録可能です。試験合格の有効期限はないため、何年経っても再登録できます。ただし取消し処分の場合は2年間の制限があります。
Q. 会社が費用を負担してくれない場合、更新をやめるべきですか?
A. 一概には言えません。転職やフリーランス志向がある方にとっては費用以上のキャリア価値があります。現職でセキュリティと無関係になった方には費用対効果が低いと感じる場合もあります。自分のキャリアの方向性を踏まえて判断することをおすすめします。なお、2026年度開始予定のみなし受講制度により、実務者にとっては費用負担が軽減される可能性があるため、詳細発表まで判断を保留する選択肢も検討してみてください。
Q. 失効後に再登録した場合、登録番号は変わりますか?
A. はい、新たに登録番号が割り振られます。以前の登録番号は無効となります。
Q. 失効したら秘密保持義務もなくなりますか?
A. いいえ、なくなりません。法律上、秘密保持義務は「情報処理安全確保支援士でなくなった後においても、同様とする」と明記されており(情報処理の促進に関する法律第二十二条)、資格失効後も生涯継続します。違反した場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象になります。
Q. みなし受講制度はいつから始まりますか?
A. 2026年度中の開始が予定されています(2025年5月、経済産業省発表)。ただし制度の詳細(対象要件・費用軽減幅など)は現時点で未確定です。IPAおよび経済産業省の公式発表を随時確認してください。
この記事は筆者のセキュリティ業界での実務経験とRISS・CISA資格取得の知識をもとに執筆しています。制度の詳細はIPA公式サイトおよび経済産業省の最新発表をご確認ください。統計データはIPA公表値に基づきます(2026年3月時点)。

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